前出の藤木さんは十数年前、不動産市場の勉強をするため、米国のシアトルに留学した。日米の違いは、「米国は売買手数料を売り主が6%支払うだけで、買い主は支払わなくていい」(藤木さん)。

 では、消費者に不利な日本の仲介市場で、売り手や買い手はどうすればいいのだろうか。

 前出の山本さんは「大手ばかりでなく、3社くらいの複数の不動産会社に声をかけること」を勧める。さらに、アポイントまでの反応が遅い不動産会社は、忙しすぎたり、営業担当者の資質に問題があったりするかもしれないとアドバイスする。具体的には、定休日などを除き、反応は連絡をして1日後くらいが目安になるという。

「お客さんとしてではなく、対等のパートナーとしてみてくれるかも大切」(山本さん)だ。例えば、売却したい物件の希望価格が高いことや内装が汚れていることなど、言いにくいようなことも指摘してくれるかが重要となる。

 米国では売り手や買い手のそれぞれにエージェント(代理人)がいる。前出の堤さんは「米国では3人の友人を持っておくべきだ」とされるとし、医者と弁護士、そして不動産エージェントを挙げる。

「米国ではいい加減な仕事ができないが、日本は誰でも営業ができてしまう」(藤木さん)。また、日本は広告宣伝に費用をかけすぎているうえ、会社が営業担当者にノルマを課していることが、仲介市場をいびつにしているともみている。

 日本の仲介市場について、前出の鈴木さんは「未成熟」と指摘する。調子のいいことばかり話していないか。納得のいく話をしてくれる担当者なのか。たくさん比較して、いい営業担当者を見つけてほしいと鈴木さんは話す。

 営業担当者を選ぶことは、現状の日本の仲介市場では最も重要になる。手数料率が高い不動産会社の営業担当者がすべてだめなわけでない。「いい担当者もいる」(鈴木さん)。あくまでも、自分がいいと思える担当者を選ぶことが、いい売買の近道になりそうだ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2023年4月21日号