「平常時」を知るためにコロナ前の19年の同調査を見てみよう。それによると、この年、同市を訪れた日本人観光客は日帰り・宿泊の合計で4466万人。このうち半分近い44.8%が50代以上の女性、すなわち「大人女子」だった。その数、実に「2千万人」。同年に同市を訪れた外国人観光客(インバウンド)は886万人だから、軽く2倍を超えている。先の阪本所長が言う。

「インバウンド消費がコロナ後の日本の景気回復を左右するなどとよく言われますが、本当かと言いたいですね。『大人女子』の消費のほうがよほどインパクトは大きいと思います」

 阪本所長によると、日本人全体の国内旅行消費のうち50代以上の消費額は全体の44.7%、約10.3兆円(推計)。男女合わせてこの数字だから、仮に京都市のように「大人女子」が大挙して全国の観光地を訪れるようになれば、旅行消費は跳ね上がることになる。

 さらに可能性を高めるのが「大人女子」への「新勢力」の参入だ。80年代のバブル経済を知っている「新人類」世代が60代に突入し、その下で就職バブルを経験した「バブル世代」が50代の中盤になりつつある。

 先の阪本所長が、

「新人類は若者消費がもっとも活発化した時代に青春を過ごしました。バブル世代はさらに強烈で、日本人の中で唯一、『貯蓄より消費』と言われるほどの消費好きです。しかも、すでに『40代女子』というトレンドワードを生み出した実績もある。そんな世代の『大人女子』たちが自由を獲得したらと思うと大いに楽しみではあります」

 と期待を示せば、先の山本さんも、

「彼女たちはディスコでお立ち台に上って踊った世代で、今でも意識の上では『ずっと舞台に乗っていたい』と思っている人が多い。彼女たちが消費を引っ張るようになると大きな波及効果を望めそうです」

 やはり「大人女子」たちからは目が離せそうもない。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2023年4月21日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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