室井佑月
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 作家・室井佑月さんは、岸田文雄首相がウクライナのゼレンスキー大統領に贈った「必勝しゃもじ」への本音を明かす。

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 岸田首相がウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に地元・広島名物の『必勝しゃもじ』を贈った、というニュースには笑わせてもらった。しゃもじは宮島の特産品。相手を『召し(飯)捕る』という意味があるとか。松野官房長官いわく、「ロシアによるウクライナ侵略に立ち向かうゼレンスキー大統領への激励と平和を祈念する思いを伝達するため」なんだって。

 ん? 日本はロシアとウクライナの仲裁をするんじゃなかったの? 平和主義なのに、片方の必勝祈願していいの?

 岸田さんのお土産センスには思うところが多々ある。が、私がいちばん切なく感じたのはそこじゃない。

 じつは、私は地域の特産品が好きである。とくに誰が買ってどこに飾るの?という土産物が大好きだ。そういう物には、今回のしゃもじのようなダジャレ風の意味や、その土地の昔話のような説明がついている。旅行の良い記念になる。

 しかし、友人知人に「旅行にいく」と告げれば、「お前の土産はマジでいらない」といわれる。「××へいくなら、これ(酒であるとか食べ物であるとか)を買ってきて。ほかの土産はいらない」とまでいわれる。

 つい先日も栃尾へいって、土地の御本尊である男性シンボルの形の酒の入った陶器を友達のと自分のと3本も買ってしまった。有名なところだと、北海道の鮭を咥(くわ)えた、沖縄のシーサーは、もちろん持ってます。

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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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