週刊朝日 2023年3月3日号より
週刊朝日 2023年3月3日号より

 こんなこともあった。昨年6月、参院選を目前に控えて放送されたNHK「日曜討論」。消費税の廃止を訴えるれいわ新選組の大石晃子政審会長に、自民党高市早苗政調会長(当時)が声を荒らげた。

「消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言がこの間に何度かあったが、まったくの事実無根。消費税の使途は社会保障に限定されている。でたらめを公共の電波で言うのはやめていただきたい」

 すかさず大石氏は挙手したが、司会者は無視。高市発言の根拠は消費税法第1条2項「消費税の収入については、(中略)年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」にあるようで、政府も自民党も何かと言えばこれを持ち出したがるのだが。どちらがデタラメなのかは一目瞭然である。

 権力者にとって消費税は、実に使い勝手のよい打ち出の小槌だ。自民党の甘利明・前幹事長は先月、岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を言い出した直後にも、そのためには消費税だと言い出した。中国の脅威を理由とする軍事拡大路線の財源にしても、早ければ統一地方選後にはまたぞろ消費税大増税に向けた世論誘導が演出されていくのではないか。所得税や法人税の小手先改変ばかりが前面に掲げられている現状が不気味だ。

 インボイスに戻ろう。この制度の恐怖は、仕入れ税額控除との関係だけではない。その以前に、決定的な災いが付き纏(まと)っている。登録事業者が強いられる、途方もない事務負担量の増大と煩雑化だ。詳細は割愛するが、新たに保存義務を課せられる書類や伝票類の、なんと膨大なことか。

 この難題を解決する手段の市場が、昨今、ビジネス界で一気に広がってきた。クラウド型会計ソフトである。

 インターネット上にデータを保存するサービスで、これを利用すれば請求書の一元管理も、記帳の自動化が容易で、データ間の連携や外部の税理士との共有も可能という。

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