そしてそのことが可能だったのは、ドラマというコンテンツが「時間の経過に耐えうるコンテンツ」だったということだ。

 私はかつて単行本の編集者だったが、単行本でも、出した当初の売れ行きはぱっとしていなくとも、ネットで火がついて半年後に売れだすということがあった。

 このことの意味を、新聞に携わるひとたちはよく考えたほうがいい。地上波からネットへ人々が活動の場をうつしているように、紙からネットへ人々は情報摂取の場をうつしている。そこでお金をとっても人々が読むコンテンツというのは、時間の経過に耐えうるそこにしかないコンテンツなのだ。

 官庁や警察に貼りついてとってくる情報は、出したとたんに、ネットで共有されその価値は瞬時にゼロになる。そうではない情報、そこでしか読めない企画を人々はお金を払って読む。

 テレビ局にとっての課題は、ネットの広告料はたかが知れているということだ。そうなるとネットの有料サービスにいかに視聴者を囲い込むかという話になってくる。ネットフリックスやアマゾンプライムなどの有料サービスと例えばFODがいかに競争して勝てるか、というフェーズに局面は変わってきている。

下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。



週刊朝日  2022年12月9日号

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下山進

下山進

1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。聖心女子大学現代教養学部非常勤講師。2018年より、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その調査の成果を翌年『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)として上梓した。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善、1995年)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA、2002年)、『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。元上智大新聞学科非常勤講師。

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