「雪肌精」のCM(コーセー提供)
「雪肌精」のCM(コーセー提供)

 そこで振り返ったのが、37年の歴史を支えた商品特性だったと亀山さん。雪肌精発売の85年に立ち返れば、ハトムギエキス入り=植物由来で、漢方の発想に基づいた雪のような透明感──それが「競合優位性」だった。

 年齢と性別を軸に区切るのは、消費者に自分向けと思ってもらえるマーケティングの王道。それをしないことでターゲットがぼやけ、誰も手を伸ばさない。そういう懸念もあった。が、「年齢や性別に関係なく、好きな人が好きなものを堂々と使う。世の中がそうなりつつあるのではないかという思いもあったし、そういう対象に雪肌精がなってほしいと思いました」と亀山さん。

 CMの2人に共通するのは「一本芯が通っているけどニュートラルで社会性のあるメッセージを届けやすいこと」と、宣伝部の山内鞠那さん。羽生選手が「男性も使えます」でなく「男性用はありません」と言うことで、女性が「自分向けでない」と思うことなく、「男女関係ないブランド」と伝わったという。

 もう一つ、この戦略を後押ししたものがある。それは、コロナ禍。

 雪肌精は中国で大人気、日本では主にドラッグストアで展開していた。コロナ禍で中国経済は急ブレーキ、日本のドラッグストアも1000円前後の商品=活況、3000円以上=苦戦とはっきり分かれた。雪肌精は後者。つまり国内外ともに厳しい。8月に発表された22年12月期第2四半期決算短信にも「主力ブランドの『雪肌精』は苦戦が続きました」とある。

「そういう時期だったから、思い切った戦略をとれたというのはあります」と亀山さん。結果は上々。ウェブでサンプルプレゼントキャンペーンを実施したら、過去の2倍以上の応募があり、何よりドラッグストアでの売れ行きが、計画を10%超上回る好調ぶり。「コロナ禍でSDGsがこれまで以上に叫ばれるようになったことも雪肌精の発信するジェンダーレス・エイジレスへの共感につながったのではないかと感じます」

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