「雪肌精」のキービジュアル(コーセー提供)
「雪肌精」のキービジュアル(コーセー提供)

 松任谷由実さん(54年生まれ)が日本の音楽史を塗り替えたのは、少し外れた場所にいた女子たちの喜びや悲しみや孤独を歌い、「私たちの歌」と感動させたこと。つまり共感ベースがユーミン以降の世代。

 能地さんは、ある同世代アーティストが「リーマンショック頃から客席に閉塞感を感じるようになった」と言うのを聞いたことがあるそうで、「今の時代、音楽で人を力づけたいと思うのはごく自然なこと」と言う。だから人生応援ソングは、ある種の「ノブレスオブリージュ」。そう分析した。

 さて冒頭のコンサートだが、61歳になった私が行ったのにはきっかけがあった。地下鉄で見た化粧品のCM。新垣結衣さんが映り、「雪肌精におすすめの年齢はありません」と静かに訴えていた。

 むやみに感動した。だって化粧品といえば年齢別マーケティング。「年齢を重ねた年齢肌」と呼びかけるドモホルンリンクルしかり、風吹ジュンさんが「人生これからー」と叫ぶ資生堂しかり。でもなぜか「年齢別」を薦められるのは、若くない世代。な気がする。

 と言ったら、能地さんが「雑誌で見たはやりの化粧品を買いに行っても、『お客さまでしたらー』って10万円もするようなセットを薦められますよね」とわかってくれた。

 そう、そういう化粧品の世界だから、「おすすめの年齢はありません」は画期的なのだ。励まされるより恋愛の歌、年齢別より年齢なしでしょ。そうだ、伊藤さんのコンサートに行こう。雪肌精のコーセーに話を聞きに行こう。と、決めた次第。

 雪肌精のCMは羽生結弦選手も登場、「雪肌精に男性用はありません」と訴える。新垣さん、羽生選手出演の6月からのCMは、どちらも「性別や年齢を問わず使える自然の恵みでつくられているから」と説明し、「地球生まれの透明感」で締めくくる。このCM、どこから来たの?

 雪肌精企画室の亀山康平さんは、20年に同業他社から転職、驚いたのが若者向けと思っていた雪肌精の購入者の中心が40、50代だったこと。自分も学生時代に使っていたブランドが、若者離れを起こしていた。

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