高齢者にとってごみ出しは一苦労だ(写真はイメージです)
高齢者にとってごみ出しは一苦労だ(写真はイメージです)

 一昔前と比べると、環境への配慮から、ごみの分別が複雑になっている。しかし、高齢になると、ごみ出しが体力的に厳しくなったり、認知能力の低下で分別が難しくなったりする。ごみ出し支援の取り組みと課題を追った。

【図表】高齢者のための「もしも」の時の備えや支援サービス一覧はこちら(全3枚)

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 歩くのに杖が必要な80代の女性Aさんは、台車でごみを集積所まで運んでいる。台車が「杖代わり」という。台車は平坦(へいたん)な道では便利だが、段差や石ころなどに車輪が引っかかる。

 あるとき、ごみ出しでAさんが台車を押していると、車輪が何かにぶつかった。反動で転び、尻もちをついた。幸い、骨折には至らなかった。

「高齢者はごみ出しで大変な思いをしている。無理をしてやっている」

 と話すのは、国立環境研究所主任研究員の多島良さん。

 ごみは日々の生活で出る。一般廃棄物の処理は、法律で市町村の責務となっている。ごみは各地で決まった日時に、集積所か、玄関先に出すと回収される。

 最近はプラスチックを含め、ごみの分別が細分化している。資源ごみは再利用を進め、環境への負荷を減らしている。一方、体力的にごみ出しが厳しかったり、認知能力の低下で分別が難しかったりする高齢者もいる。

「高齢者は若い人よりもルールを守ろうという気持ちが強いが、高齢者が多い地域ほど、ルール違反が多い」

 国立環境研究所特別研究員の鈴木薫さんはこう話す。特に、プラスチックの分別が高齢者にとって難しいという。

「どれも同じように見えて、資源ごみと燃えるごみに分別しづらい」(鈴木さん)

 分別の細分化が進んでも、「昔のルールをかたくなに守る人もいる」(同)という。

 前出の多島さんによると、本県水俣市では分別を細かくしているが、高齢で分別が大変な人には「『分別ご免除シール』をごみ袋に貼ってもらい収集している」という。自治体が収集した後、シールを貼ったごみ袋のなかを分別している。

 こうした高齢者のごみ出しを支援する「ふれあい収集」という取り組みが各自治体で進められている。

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