岸田文雄首相
岸田文雄首相

■非主流派結託で岸田政権瓦解へ

 ただ、仮に安倍派が分裂するような事態になれば、ゆくゆくは岸田政権の瓦解につながりかねないとの見方もある。

 現在、岸田政権の中心は岸田派、麻生派、茂木派、安倍派の4派。中でも最大勢力の安倍派が分裂して一部が非主流派に転じ、岸田氏と「犬猿の仲」の菅義偉前首相と結託するような事態となれば、弱体化した岸田政権の脅威となりかねない。前出の伊藤氏がこう語る。

岸田首相が一番恐れているのは、菅氏を中心に非主流派がまとまることです。岸田氏はちょっとでも隙を見せると足をすくわれる。安倍派の中では萩生田氏と菅氏の関係が良好です。今後は菅氏の動きが政局のカギになっていくでしょう」

 9月上旬、永田町では「岸田首相が近々衆院解散に打って出るかもしれない」との臆測が流れた。ある官邸関係者は「解散風の出元は菅氏周辺」との見方を示す。昨年の衆院選から1年も経過していないのに解散すれば議席を減らす可能性が高いため「解散などするわけがない」(官邸関係者)のが常識的な見方だ。にもかかわらず、菅氏があえて観測気球を飛ばしたのは「政権を揺さぶって、自らの存在感を示すためではないか」(同)と受け取られた。9月に岸田首相と会食した財界人によると、「首相は菅氏の動向に非常に関心を示していた」。両者の水面下での神経戦が続いているようだ。

 来年5月の地元・広島サミットまで「何としても政権を維持する」(周辺)のが最優先事項だという岸田氏。そもそも国民のためになる政治をしてくれることが、最大の延命策のはずなのだが……。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年10月7日号