高校時代のコウジ・エバラードさん
高校時代のコウジ・エバラードさん

 「陶芸はスポーツと同じで、上達するには経験を重ねるほかない。そのような意味ではスポーツと共通の要素があると感じました。また、ろくろを回している瞬間の集中力、没入感は他に代えがたいものがあり、『無』になれる点が普段の生活の良い気分転換になりました」

 この「気づき」がきっかけとなり陶芸のクラスを2年生、3年生と継続。また、掛け持ちしていたスポーツ系の部活を3年生の時に辞めたため、さらに陶芸にのめり込んでいく環境ができた。

 その結果、「なんとなく」ではじめた陶芸が高校生活の4年間を終える頃には、生活の多くを占めるように。大学への進学を控えた時、エバラードさんはさらに陶芸の腕を磨くことを決断した。すでに合格していたオックスフォード大学への進学を断念してまで、だ。

 陶芸の腕をさらに磨くため、日本国内6カ所の伝統的な陶芸の産地に、修行をしたい旨の手紙をしたためた。兵庫・丹波を拠点とする陶芸家、大西雅文氏の元で1年間アシスタントとして従事。登り窯という窯の使い方や焼締めという、釉薬(ゆうやく)をかけず高温で焼成した陶器の製作方法などを学んだ。

丹波での修行時代
丹波での修行時代

 その後は改めて合格した米国の名門、ハーバード大学へ進学。歴史学を専攻しつつ、校内にある陶芸スタジオでたまに時間を費やす生活が始まった。しかし1年間、陶芸と密に向き合った直後ということもあり、入学から5カ月で「もっと陶芸に時間を費やしたい」と感じるように。

 2年生を終えた時点で休学し、大学のあるボストンから佐賀・唐津に拠点を移し、当地で代々陶芸を営む中里太亀氏の元で1年間修行を積んだ。このときは陶芸の作法だけでなく、まき割りや敷地内の草むしりといった下積み的な作業もこなし、余すことなく陶芸の世界にのめり込んだ。

 1年の休学後は復学し、無事に卒業。現在は前述の通り、経営コンサルタントと陶芸家として二足のわらじを履く生活を歩んでいる。

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米国の生活様式にあった作風を