
定年後の人生を社会貢献に捧げるシニアが増えている。専門性がなくても、豊かな人生経験を生かして十分に役割が果たせるという。その一つが、人や組織をつなぐ力だ。連絡役の意味もあるフランス語から“リエゾン”シニアとも呼ばれる。
「長く働く」が世の一大テーマになるにつれ、「元気な高齢者へ向けた仕事づくり」という分野に、まるで吸い寄せられるように人の役に立ちたいシニアが集まってくる。
大手広告会社、電通OBの一力廉さん(75)は9年前、会社時代の先輩や同僚と一般社団法人「IKIGAIプロジェクト」を設立した。
「会社員時代は、やりたくても手の及ばない仕事がいっぱいあった。例えば、対中小企業や対地方自治体です。こうした団体から要望をヒアリングして、できる人を紹介していく。これは人材紹介の組織なんです」
登録しているのは同じく電通のOBたちだ。地方に関心のある人や専門性の強い人が多い。一力さんによると、どんどん仕事が増えていくわけではないが、登録者によっては自治体から引っ張りだこになっている人もいるとのことだ。
この社団法人の中で、一力さん自身は社会貢献ができる仕事に関わり続けている。“リエゾン”の名にふさわしく、人をつなぐ仕事が多い。
「今は工務店が行っている取り組みを応援しています。東京の方に秩父で植樹をしてもらったり、森の中で自然観察会をしたりして都市部と秩父の森をつなぐことが仕事です」(一力さん)
社会と関わり続ける動機は、やはり人の役に立ちたいからだ。
「人生の前半期は、どうしても『自分のため』が中心になります。だから、後半期の今は『他人のため』を中心に置いています」(同)
仕事がうまくいくコツは、いつの世も人脈とアイデアだろう。顔が広ければ、自分が「つなぐ」だけではなく、逆に相手に「つないで」もらうことも多くなる。
また、豊かな発想をもとにしたアイデアが湧き上がってくれば鬼に金棒だ。