イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 後日、Aさんから煮貝が送られてきた。煮汁に浸った鮑の真空パックが桐箱に収まっている。調べたらめちゃくちゃ高価。スライスしたキュウリを添えてワサビで食べてもよし、身を厚めに切って肝も混ぜて炊き込みご飯にしてもよし。うめえ、うめえよ、Aさん。すぐに御礼の電話をする。「何よりです。山梨は美味しいモノたくさんありますから、またおいでくださいね。馬肉も美味いから今度馬刺し送りますよ!」

 ……汗だくで煮貝を運んでやってるのに、まさかこの後自分も食われるとは思ってもなかっただろうな……馬。そんな山梨、大好きですよ。タンパク源がとれりゃ海なんかいらねーよ、山梨!

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!

週刊朝日  2022年7月29日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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