『声に出して読みたい日本語』で知られる教育学者の齋藤孝さんが今年、『齋藤孝の小学国語教科書』を世に送り出しました。作家の林真理子さんとの対談で、齋藤さんが著書に込めた思い、古い日本語の魅力、国語教育などについて語ってくれました。
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齋藤:(大きな花束を手渡して)日大の理事長ご就任おめでとうございます。
林:まあ、すごいお花!! ありがとうございます! 写真撮ってもらおう(笑)。ところで、先生が『声に出して読みたい日本語』をお書きになったのは何年前ですか?
齋藤:2001年だったので、21年前ですね。
林:そして、今度は『齋藤孝の小学国語教科書』(以下、『教科書』)という本をお出しになったんですね。これ、大人が読んでも十分おもしろいですよ。
齋藤:大人も一緒に読んでもらいたいという思いは強いです。いま、大人が古い文学作品を読む機会が減って、古い日本語に接することがなくなっているような気がするので、この本をきっかけに触れていただきたいなと思います。
林:シェークスピアから、坂本龍馬が姉の乙女(おとめ)に出した手紙まで取り上げて、よくまあ森羅万象いろんなことを知ってらっしゃるなと思いました。
齋藤:僕は古典が好きで、小学校のときにシェークスピアのいくつかの話が入っている本を読んだりして、ビッグネームと接する機会がわりと早かったんです。トルストイの『復活』は小学生のときに読みました。
林:えっ、小学生のときに!?
齋藤:はい。分厚いし、大人の話なので、子どもはあまり読まないですけど(笑)。高校時代にはドストエフスキーとかも読みました。「人生いかに生きるべきか」と考えてるときだったので、思い出深いですね。
林:いま、トルストイやドストエフスキーを体験してる若い人、少ないかもしれないですね。時間がないと読めないですから。
齋藤:本を読んでるヒマな時間って、いま思うと「黄金の時間」ですよね。学生さんは、SNSで自分の精神世界をかき乱されてる感じがするので、とりあえずそこから離れて、静かに本を読んで、偉大な人物の話に耳を傾けなさい、と言いたいです。