諏訪中央病院の鎌田實名誉院長
諏訪中央病院の鎌田實名誉院長

 高齢になると、医療の検査や治療をどの程度受ければいいのか悩ましい。検査は痛みや合併症などを伴うリスクもあるからだ。病気が見つかって薬の服用で生活の質を落とすことも。「賢い選択」を聞いた。

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 諏訪中央病院(長野県茅野市)の鎌田實名誉院長は、心房細動治療で入院し、主治医から胃カメラや大腸内視鏡の検査を勧められた。受診の結果、異常はなかった。

「胃カメラは7年ぶり、大腸内視鏡検査は10年ぶりくらいだった。いま73歳で、症状がなければ検査はなくていいと思っている」

 高齢者の医療検査や治療はどの程度の頻度や内容が必要なのか。鎌田さんは「年齢と人生観で違う」という。検査を徹底的にしたい人もいて、年齢だけで必要か不要か決めるのは難しい。「75歳まではいろいろな検査をしても、その後は人生観で、検査が嫌いなら、やらなくてもいいのでは」と話す。

 たとえば、大腸内視鏡検査は5年、10年の頻度で十分とのアドバイスもある。米国の内科専門医認定機構財団は不要な医療検査や治療をなくすため、「チュージング・ワイズリー」(賢い選択)の活動をしている。医療検査によっては多量の出血や激しい腹痛のリスク、合併症などで死の可能性もあるとする。さらに高額な費用がかかることがあるとも指摘する。

 しなやかな老活術を提唱する鎌田さんは、著書『ピンピン、ひらり。』(小学館新書)で、この活動を紹介。患者に本当に必要で、副作用の少ない医療検査や治療を賢く選択することを説く。

「ひらりと逝きたい」という鎌田さんは、医療検査や治療が必要なら仕方ないと考える。一方、ピンピンという生活を損なうなら、医療検査や治療を受けたくないという。

 高齢者が医療検査を受けて病気が見つかって薬を服用し、かえって生活の質が低下することもある。たとえば、コレステロール値が高いと問題視される。内科外来で診察する鎌田さんは、70歳以上の患者のコレステロール値が高くても、基本的に薬を処方しない。

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