■日本は抗生物質、安易に使いすぎ

 さらに、【3】健康で無症状の人にMRI(磁気共鳴断層撮影)による脳ドック検査を推奨しない。脳出血などのリスク発見に優れた画像診断検査とされる。一方、安全性は高いものの、造影剤により、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐などの副作用には注意も必要とされる。呼吸困難などの重い副作用が出ることがあるとも。

 チュージング・ワイズリーでは、“耐性化”の問題も指摘する。抗菌薬の使用で将来、耐性菌による感染が起こりやすくなるほか、耐性菌による感染症は治療費が高くなるという。

 日本では熱が出るとすぐ抗生物質を使いがちという。鎌田さんは「感染症に効かず、安易に使われすぎている」と警鐘を鳴らす。むしろ、多剤併用で耐性菌をつくり、抗生物質が効かなくなるリスクを指摘する。欧米のように、まずは菌を見つけ、そこに抗生物質を使うべきだと話す。

 一方で、医療検査ではなく、健康診断は必要なのか。健康で無症状の人は健康診断は無意味という考え方に対し、鎌田さんは違和感もあるという。地域医療では「生活習慣を見直すのも役割」だからだ。結果を見て、野菜を多く食べ、運動するなど、生活習慣を見直すなら意味があると話す。

 また、予測寿命が10年以内なら、がん検診はほとんど無意味とチュージング・ワイズリーはアドバイスする。がん治療で生活の質を落とすより、残る人生を自由に生きるのがいいという考え方だと鎌田さんは解説する。

 日本では、がん検診が多く実施されているという。「“寿命があと10年”は予測がつかない」ため、チュージング・ワイズリーのように賢く対応するのは難しさもあるとも指摘する。

 不要な医療検査や治療を推奨しないチュージング・ワイズリーどおりでなくても、本人が望まない医療検査や治療をしない動きが広まるといいと鎌田さんは考えている。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年6月24日号