コレステロール値は少し高い人のほうが血管障害は起きにくく、高齢者はコレステロール値の低いほうが死亡率は高い、というデータがあると鎌田さんは指摘する。

 総コレステロール値の適正域は220mg/dl未満とされる。鎌田さんは、患者の総コレステロール値の高さで対処方法を変える。280を超す値には、治療を相談して薬を出す。値が250とか260くらいなら薬をやめ、生活習慣の改善で総コレステロール値がどうなるのか、見てみましょうと伝えている。

 口からの食事が難しくなったり、むせこんで肺炎を起こしやすくなったりした人に、胃に小さな穴を開け、カテーテルを通し栄養補給するのを「胃ろう」と呼ぶ。「日本は先進国でも胃ろうが多い」。欧米などでは医師がこの処置を簡単に選択しないが、日本ではなんとなく食べられなくなると処置されがちという。海外では安易な延命措置を避ける傾向にあるようだ。

 高齢で体の具合が悪くなり、あるいは認知症になって自己判断が難しくなることがある。食事をとりにくくなった親に胃ろうが必要と医者が言うと、子どもだけで判断し、親に胃ろうは必要ないと言いにくい。

 鎌田さんは「本人が元気なうちに、食べられなくなったら胃ろうや、人工呼吸などの延命治療は必要ないと言っておけば、いまの医者は患者の意思決定を尊重する」と話す。医療処置で短期間に改善の見込みがあれば話は別だが、延命処置をしても助かる見込みがない場合、本人の希望が重要となる。

 チュージング・ワイズリーは、【1】健康で無症状の人にPET、CT検査によるがん検診を推奨しない。PET検査とは検査薬を投与し、特殊なカメラで画像化し判断するもの。通常の人間ドック検査に比べ、がん検出率は約20倍とされる。CT検査とは、部分的に体内の腫瘍の状態を見るもの。代謝の状態を見るPET検査と合わせ、より正確な検査ができる。一方、放射性薬剤を用いるため、少ないものの、放射線被曝があるとされる。

 また、【2】健康で無症状の人に血清CEAなどの腫瘍マーカー検査によるがん検診を推奨しない。CEAは、がんの存在を示唆する腫瘍マーカーの一つで、腫瘍マーカー検査は血液や尿など体液成分を調べる。がん細胞が多いと数値が高くなる。一方、飲酒や喫煙といった生活習慣などの影響で、がんと無関係に数値が高くなることがあり、逆に、がんでも数値が高くならないこともあるため、これだけで確定できず、参考になる検査の一つとされる。また、すべてのがんで、特定の腫瘍マーカーが見つかっているわけでないとも。

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