着陸直後のソユーズから担ぎ出される前澤友作さん
着陸直後のソユーズから担ぎ出される前澤友作さん

「インターネット関連のビジネスは通販や音楽配信など、データにしやすいところから広がった。宇宙ビジネスでいまつくっているのはインフラ。大きな可能性が広がっている」(金本さん)

 スペースシフトが関わるビジネスでは、特に建設会社からの相談が増えているという。たとえば、人工衛星を使い、地上の変化を細かく捉えられる技術などが建設会社にとって有用だという。

■保険金支払いで衛星画像を活用

 東京都調布市の住宅街の道路で20年に陥没事故が発生した。原因は地下47メートルの巨大トンネル工事による地盤沈下だった。

 前出の技術を使って、事故後に当時の地上の様子を調べたところ、「事故の1カ月くらい前から沈降が始まっていた」(同)。このため、工事をする際に、周辺の地上の様子を衛星で常時観測すれば、防止措置がとれるという。地上で人が行くのが難しかったり、面倒だったりするところも、衛星からなら容易に見ることができる。

「衛星データによる危険箇所の予測は、地上の人間による観測に比べ広域にできる。重要なのは人がわかっていない変化」(同)

 また、関西国際空港がある人工島は、わずかずつだが沈降しているが、地上と衛星からの計測結果を突き合わせて見てみると「ミリ単位で合っている」とも金本さんは話す。

 保険業界で宇宙ビジネスに力を入れているのが東京海上日動火災保険。

 ロケットや人工衛星の打ち上げはリスクがつきもの。ロケットや人工衛星はつくるのに時間がかかり、打ち上げるまでに巨額の費用を要する。打ち上げが増えるにつれて、最近は低コスト化が進んできているが、まだ量産化する技術は確立されていない。

 宇宙ビジネスにかけられる保険市場は世界で「500億~600億円、ほとんどが静止軌道の通信衛星関連」(東京海上日動担当者)。

 保険の料率は打ち上げ実績などにより、事業の数%程度から、打ち上げ実績のない新型ロケットで10%を超えることもあるという。

 前出の金本さんは、機材や打ち上げなどのコストが下がってくると、全体に占める保険コストが相対的に大きな負担になると話す。それでも、「宇宙では失敗がつきもので、経営上、損失予測を可能にする必要がある」(金本さん)とし、保険は不可欠という。

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