宇宙ビジネスの保険のアンダーライター(保険金の妥当性を判断・査定する人)は、世界で「最大でも100人くらいしかいない」(東京海上日動の担当者)。そのうちの1人が、この東京海上日動の担当者だ。

 別の同社担当者によると、地上の火災や自動車の保険は「大数の法則」(試行を数多く繰り返すと理論上の確率に近づくこと)を適用できるが、宇宙保険は年間の打ち上げ回数が100回くらいで数が少なく、統計値をとるのがまだ難しい。

 一方、東京海上日動は、人工衛星画像を活用した保険金の支払いの高度化も進めている。三菱電機など衛星ビジネスを手がける企業3社と提携し、台風や豪雨などで増えている水害の被害で、保険金の支払いを迅速化するもの。

 これまで一軒一軒を人が確認してきたが、被害の範囲と浸水高を数センチ単位で把握できるようになり、支払いまで平均2~3週間程度かかったのを「タイムリーにできる」(担当者)。

 静岡県熱海市の伊豆山地区で昨夏、盛り土の崩落による土石流が発生した。多くの家屋が流され、多数の死者が出た。東京海上日動では、衛星画像で数軒を全壊と認定したという。

 衛星画像の解析について、東京海上日動の担当者は、ミリ単位という細かさのほか、同じ場所をどのくらいの頻度で見ることができるかがポイントになってくるという。

「人工衛星が35機くらいあると、1時間おきに世界中のどこでもデータをとれる」(担当者)

「宙を拓くタスクフォース」の報告書は、宇宙の利用の将来像として、衛星インフラ構築・運用、衛星活用サービス、宇宙探査・有人宇宙活動、宇宙環境活用サービス、輸送システムなどを挙げる。

 衛星活用サービスには通信・放送サービスや衛星測位を活用したサービスなどがある。宇宙探査・有人宇宙活動には植物工場や水・空気の再生技術なども含まれる。輸送システムにはロケットや宇宙エレベーターなどもある。

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