スペースX社のクルードラゴン(GettyImages)
スペースX社のクルードラゴン(GettyImages)

 宇宙旅行だけではない。衛星を使った建築現場の事故防止、災害時の保険金支払いの迅速化など、宇宙ビジネスの裾野は大きく広がりつつある。今世紀半ばまでには100兆円規模に達するという。

【写真】着陸直後のソユーズから担ぎ出される前澤友作さん

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 民間企業が打ち上げた宇宙船で、宇宙旅行ができる時代を迎えた。

 イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が率いる米国宇宙企業「スペースX」が昨年9月に「クルードラゴン」を打ち上げた。4人の民間人だけが乗船して地球を3日間周回して帰還した。

 日本人ではファッション通販サイト「ZOZO」創業者の前澤友作さんなどが昨年12月に日本の民間人として初めて、国際宇宙ステーションに滞在するなど、12日間の宇宙旅行をした。こちらはロシアの宇宙船「ソユーズ」で、ロシア人の宇宙飛行士と一緒だった。

 宇宙関連のビジネスは、非常に有望で巨大な市場とされる。すでにテレビ放送や気象情報などの分野で、人工衛星を利用したビジネスが展開されている。ロシアによるウクライナ侵攻では、ロシア軍の動向が人工衛星からの画像などで逐一監視され、軍事分野でも宇宙空間の役割が大きい。

 宇宙関連ビジネスの市場はどれぐらいの規模になるのか。2040年代には100兆円を超えると、米国の金融機関が相次ぎ予想している。モルガン・スタンレーが1.1兆ドル(16年は3391億ドル)、ゴールドマン・サックスは1兆ドルに達すると、いずれも17年に公表している。今年度の日本の国家予算を上回る規模だ。ロケットや人工衛星の打ち上げなどの宇宙機器産業をベースに、それを活用した派生的なビジネスが大きく伸びると予想されている。

 総務省が開催した、長期的な宇宙利用の将来像を議論する有識者会議「宙(そら)を拓くタスクフォース」が19年にまとめた報告書によると、50年の国内の宇宙産業市場は59.3兆円と予想。このうち宇宙関連産業が4.4兆円、波及的市場は54.9兆円とみている。

 宇宙ビジネスが「インターネットと同じ構造で広がっていく」とみているのは、衛星データ解析をするスペースシフトの金本成生CEO。

 日本で90年代半ばにインターネット接続事業者のプロバイダーが登場し、2000年代初頭に高速で大容量のデータ回線サービスが可能なブロードバンドが普及した。そしてツイッターなどのアプリが登場した。グーグルやアップル、アマゾンなどの巨大企業の登場は、インターネットが普及する以前には誰も予想できなかった。

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