日経平均株価の下落を示すボード。岸田ジャパン、大丈夫か……
日経平均株価の下落を示すボード。岸田ジャパン、大丈夫か……

 岸田首相の経済政策への理解不足はこれだけではない。2月にはコロナ対策として「雇用調整助成金」の上限額や助成率を引き上げる特例を6月末まで延長すると発表した。経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこれを「経済オンチの典型的な例」と指摘する。

「これはコロナ禍で従業員をクビにしないためのお金です。日本の失業率はコロナ前と変わらない約3%を維持しましたが、産業の構造改革が進まず、旧態依然。一方、米国ではコロナ禍で多くの人が職を失い失業率は一時的に拡大しましたが、今ではポストコロナ産業が育ち、そこに人々が移動しています。日本はまた世界から後れを取った」

 物価上昇対策として首相がこだわるのが賃上げだ。新年度の税制改革の目玉として、従業員の給与を一定以上増やした企業の法人税を減免する「賃上げ促進税制」をスタートさせた。前出の中原氏は「社会主義国のような政策」と指摘する。

「政府主導で賃金を引き上げても、生産性は上がりません。順番が逆で、生産性が上がれば賃金も上がる。努力しないで給料をもらえる賃上げで問題が解決できるなら、社会主義が成功しているはずですよ。成長戦略がないまま賃上げだけしても意味がありません」

◆岸田氏に欠けるバラマキの作法

「分配」を強調する岸田首相だが、補助金・給付金について議題に上がるたびに、ゴタつく光景が定番になっている。

 18歳以下の子ども1人につき一律10万円を支給する「子育て給付金」では、年齢の区切り方や、クーポンを併用するかどうか、所得制限はどうするかなどで揉めに揉めた。

 4月からの年金受給額が減る高齢者らに5千円を給付する「年金生活者臨時給付金」も、支給額に対して事務経費がかかりすぎるなど多くの反対に遭い、立ち消えになった。前出の山崎氏が言う。

「子育て給付金は、用途を絞る必要もなかった。もらった人が考えればいいことです。5千円給付もひどい話で、困っている現役世代には給付しないでいいのか。要は、岸田首相はバラマキの作法を知らないんです。バラまくなら『一律、公平、定期的』にすべきで、所得や年齢などの条件を増やすほど事務経費が増える。たとえ必要のない高所得者にまで支給されてしまったとしても、税金を徴収することで取り戻せばいいんです」

次のページ