設立前年の84年は、覚醒剤取締法違反による検挙者は戦後第2のピークを迎え、2万4372人を記録(2021年版 犯罪白書)。「ダルク」の存在は一躍注目を浴びた。

 名古屋市、横浜市の順に各地に拠点が誕生し、91年には都内北区に女性限定の「ダルク女性ハウス」もできた。

「全国各地のダルクは独立採算、独自のルールで運営されており、現在、国内に63団体89施設、韓国に3施設あります」(日本ダルク・広報担当の三浦陽二さん)。

 入所者数は約500人。1日数回のミーティングを中心に、各地のダルクがオリジナルプログラムを実施し、最終的に就労、自立生活を目指している。

 近藤さんは全国のダルクをサポートしながら行政、法律家、医療関係者、薬物研究者らと連携し、国内だけでなく海外の薬物問題にも取り組んできた。また、学校や刑務所などでの講演も精力的に行ってきた。

 その功績により、94年に東京弁護士会人権賞、2013年には犯罪・非行防止に貢献した人に送られる作田明賞最優秀賞を受賞。01年には自伝的ルポ『薬物依存を超えて』(海拓舎)で吉川英治文化賞も受賞している。

 その一方、「ダルク」は著名人の薬物依存者の救済も積極的に行ってきた。

 田代受刑者や歌手のASKAさん、そしてNHKの子供番組「おかあさんといっしょ」の9代目「歌のお兄さん」で、16年4月に覚醒剤取締法違反容疑で逮捕された杉田あきひろさんらだ。

 田代受刑者は日本ダルク本部の職員だったことがあり、ASKAさんは一時、ダルクの回復プログラムを受けていた。杉田さんは、長野県上田市にある「長野ダルク」に執行猶予が明けるまでの3年間入所し、社会復帰を果たしている。

 杉田さんは自身のSNSで近藤さんの訃報を伝え、「僕の裁判にも来てくださり『一緒に回復していこうな』と言ってくださった近藤さん。いつも優しい笑顔でした。近藤恒夫さんのご冥福を心からお祈りいたします」とつづった。

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