(c)Thomas Ash 2021
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「私は決して“日本の問題”を追っているわけではありません。私が捉えているのはあくまでも『いま自分がいる場所』にある問題。自分のまわりで社会から排除されている人に目が行き、それを記録して伝えるべきだと思ったのです。日本人が特別に悪い人たちだとも思っていませんし、日本人が好きだからこそ、この映画を作った。本作は海外の映画祭で先駆けて上映されましたが、彼らはデニズさんの制圧シーンで『日本人もこんなことをするんだ』と言います。自分たちと同じなのか、と」

 まずは誰よりも日本人にこの状況を知ってもらわなければ、と監督。

「映画を観て『もっと知りたい』と思ってもらうこと、そして『なにかしなくては』という気持ちになってもらうことが私の目的です。入管の問題がここまで公になるまでには何十年もかかっています。解決するにも相当な時間がかかるでしょう。でもとにかく、いま苦しんでいる大勢の人たちをどうにかしてあげないといけない。そしてさらにこれから日本に来る難民たちのためにも対策を考えないといけない。希望があると言える状況ではありませんが、希望の兆しは見えている、と思いたいです」

(フリーランス記者・中村千晶)

週刊朝日  2022年3月18日号