※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 朝に夕に毎日4~5時間は見る生活を続けたあと、次にハマったのは、ヘンリー塚本という70代の監督の作品群だ。

「昭和エロス」というジャンルの巨匠で、AV界では知らない人はいないレジェンド。昭和のサラリーマンや団地妻、農家の妻などを主人公にした物語が多く、引退した今も、幅広い年齢層で根強い人気を誇っている。

「今度は一転、中年の女優さんの作品に夢中になったんです。やや暗く、畳の上でジトッと交わり合うような作品にひかれるようになった。かっこいいプール付きのホテルとか、やっぱりついていけない……いや、エロスを感じないんですよ」

 ヘンリー塚本作品は30作品以上見た。なかでも繰り返し見た好みのシーンはこんな感じ。

「薄暗いアパートで二人の中年男女が、ラーメンを食べてからSEXするとか(笑)。極めつきは農家の夫婦が、昼休みに握り飯を食べた後、畑でするシーンもいいなあと思います。終わった後、やかんの水で2人が局部を洗うのも、何かリアルでしょう?」

 でしょう?と私に言われても……。とにかくAさんの場合、最終的に行き着いたのが、食事、労働などの“生の営み”が、“性の営み”とセットになった作品だった。

「何でかなと、自己分析してみました。自分は肌のぬくもりに飢えているのかもしれないと思ったんです。だからアダルト動画で疑似体験しているのかも、と」

 そう考えるとわびしさが募り、アダルト動画を見る意欲が少し減退していったという。

 そういえば、猥談がまだセクハラ認定されていなかったその昔、アラカンのおじさん上司がこう口を滑らせて、若い部下にドン引きされていたことを思い出した。

「AVでは、裸で静かに抱き合っているシーンが一番好き。ギュッてヤツだよ。挿入なんかより、こういうシーンを増量してほしいもんだね」

 それはともかく、高齢者層のアダルト動画市場への参入を「心より歓迎している」というのは、AV監督の二村ヒトシさんだ。ちなみに二村さんは、前出のヘンリー塚本作品にも、男優として出演経験があるという。

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