※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

「80歳を過ぎた老父が、一日中アダルトビデオを見ています」「70代の夫がアダルト動画好きで、困っている」……ネットのお悩み相談には、アダルト動画好きな高齢者に戸惑う家族からの投稿が古くから散見される。なぜハマってしまうのか。

*  *  *

 68歳のAさんも、スマホによるアダルト動画鑑賞の“沼”にハマった一人だ。まずはその告白に耳を傾けてみよう。

「妻は10年前に他界し、子どもたちも独立。定年退職後の5年前、地方都市の一戸建てを引き払って、東京都心に1LDKのマンションを購入したんです」(Aさん)

 難関私大を卒業後、教育関係の仕事を勤め上げ、地元ではちょっとした“名士”としても知られていたAさん。リッチな年金生活で、スポーツ観戦、美術館巡り、陶芸、史跡散策など、多彩な趣味を楽しむ気ままな一人暮らしを満喫していた。

 ところが……。コロナ禍が起き、あれもできない、これも行けないと、老後の計画がめちゃめちゃに。何よりつらかったのは、家族や知人との交友が途絶えたことだ。生身の人とのコミュニケーションといえば、コンビニの外国人店員とする1日数十秒の世間話だけ。精神的にこたえた。

「何だか軟禁されている気分になって、好きだった本もあまり読みたいとは思わなくなった」

 そんなとき、多彩な趣味を持つインテリ高齢者のAさんをとりこにしたのは、まさかの無料アダルト動画だった。最初はスマホを使って、大手動画配信サイトで若い女性のアダルト動画ばかりを見ていた。ただし、鑑賞目的は、若いときのそれとは別物だった。

「妻を亡くしてから、そっちのほうはごぶさた。ええ、朝立ちなんかもないです。でも20代の若い女性を見ていると、こっちまで元気になった。生命エネルギーのお裾分け、とでもいうのかな」

 若い女性は出てくるものの、例えば好きなシーンは、男女が「居酒屋で飲み食いしている」ところ。

「そのあと交わるのがお約束なんですが、飲んで食って、やる、みたいなところが動物的で、とっくに欲望が枯れている身には何だかまぶしかった。まあ、欲望は枯れているのに、生きる執着だけはしっかりある自分が、またどうにも情けないんですけどね」

次のページ