塩野義製薬が治験中のコロナ経口薬
塩野義製薬が治験中のコロナ経口薬

 いよいよ新型コロナウイルスの飲み薬が実用化される。厚生労働省は12月24日に審議会を開き、米製薬大手メルクが開発した抗ウイルス薬「モルヌピラビル」を特例承認する見通しだ。

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 すでに、日本政府はメルクと160万回分の供給を約12億ドル(約1370億円)で契約。年内に20万回分、来年2月と3月に20万回分ずつ、その後も100万回分の供給を受ける。

 自宅で飲めるコロナ治療薬は国内初。軽症から中等症の患者が対象で1日2回、5日間服用する。高齢者など重症化するリスクが高い約1500人を対象に実施した臨床試験では、発症から5日以内に服用。偽薬群と比べて入院・死亡リスクを約30%低下させる効果が認められたという。

 モルヌピラビルの作用の仕方について、メルクの日本法人MSDの広報担当者が説明する。

「ウイルスの複製に必要なRNAポリメラーゼという酵素の働きを抑え、ウイルスが増殖できないようにします」

 海外のメガファーマに先を越されたが、国産治療薬も塩野義製薬が臨床試験の最終段階に入っている。製薬会社関係者がこう語る。

「塩野義は抗菌薬や抗ウイルス薬の開発が得意で、世界トップランクです。エイズ治療薬のテビケイや、インフルエンザ治療薬のゾフルーザなどを手がけてきました」

 コロナ治療薬の第2・3相試験は約2千人を対象としているが、国内で感染者が急減したため韓国やシンガポール、ベトナムでも実施。有効性や安全性が確認できれば、年内にも承認申請を目指す。同時に薬の生産も進め、2022年3月までに100万人分を目標とする。

 コロナウイルスの増殖を防ぐ点は同じだが、こちらは「3CLプロテアーゼ」という別の酵素に作用する。では、オミクロン株など変異株にも効くのだろうか。

「デルタ株もオミクロン株もこの酵素が変異したものではなく、ほとんどが表面の(突起状の)スパイク蛋白の部分です。効果は期待できるのではないかと考えています。オミクロン株を入手できしだい有効性を確認することになります」(広報部)

 迫り来る「第6波」への切り札となれるか。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2021年12月31日号