柄本時生 [撮影/写真部・張溢文、ヘアメイク/住友由香(MARVEE)、スタイリスト/矢野恵美子、衣装協力/CURLY&Co.(The Weft)]
柄本時生 [撮影/写真部・張溢文、ヘアメイク/住友由香(MARVEE)、スタイリスト/矢野恵美子、衣装協力/CURLY&Co.(The Weft)]

 当時はすでに、テレビの仕事などを中心に、ぽつぽつ仕事は来るようになっていたが、バイトをしなければ生活は立ち行かなかった。「社会人として食っていくには、俳優をやるしかない」と、そのことを言い聞かせる意味でも、職業欄には「俳優」と記入するようになった。

「俳優業が楽しいと思うようになったタイミングは?」と質問すると、「楽しい……? うーん」と頭を抱える。そういえば、父の柄本明さんも、ドキュメンタリー番組で似たような質問をされて、「芝居っていうのは、楽しいだけじゃないからね」と、楽しさに関しての回答を避けていた。

「ハハハ。思考は、やっぱり親父と似ているのかもしれないです。親父って……ひねくれているというか、紋切り型の質問や答えを毛嫌いするようなところがあって。僕が小さい頃から、あの人がそういうことをずーっと言い続けているものだから、僕まで、何か『楽しいですか?』みたいなことを聞かれて、すぐ口籠もってしまうようになった」

(菊地陽子 構成/長沢明)

柄本時生(えもと・ときお)/1989年生まれ。東京都出身。2003年「Jam Films S 『すべり台』」のオーディションに合格し俳優デビュー(映画は05年公開)。近年の出演作品に映画「BLUE/ブルー」「CUBE」、Netflix「全裸監督シーズン2」など。ドラマ「真犯人フラグ」(日本テレビ系)、「会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編」(ABEMA)が放送中。22年1月13日からNetflixで「新聞記者」が一挙配信。

>>【後編/柄本時生が「仕事をやらないという選択肢を試してみたい」理由】へ続く

週刊朝日  2021年12月24日号より抜粋