※写真はイメージです (GettyImages)
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 財産を相続人以外へ残す選択肢として、故人が残した遺産を、特定の個人や団体に寄付する「遺贈寄付」が注目を集めている。とはいえ、遺贈寄付について詳しく知る人はまだそれほど多くないだろう。想いを実現するには、遺言書の作成などの手続きも欠かせない。どんな点に注意したらいいか、具体的に見ていこう。

【遺言の種類と違いはこちら】

前編/「遺贈寄付」が増加傾向 関心が高まる背景は?】より続く

 第一に、寄付をする団体についてしっかり調べる必要がある。どんな活動をしているかはもちろん、将来にわたり安定して活動していけるかを見るうえで、団体の運営状況や財政状況は丁寧に把握しておきたい。わからない点は直接、団体に問い合わせるとよい。情報開示の姿勢も大事な判断材料になる。寄付先は一つに絞る必要はなく、複数の団体でも構わない。

 次に、寄付先が決まったら、いくら寄付するか決める。そのためにはまず、自分がどれだけ財産を持っているか、最終的にどれだけ残せそうかを把握、整理しておくのが必須だ。寄付するかどうかに限らず、終活をするうえでの基本でもある。

 どこにいくら寄付するかが決まったら、その旨を遺言書に残す。無用なトラブルを避けるためだ。これまでも本誌でたびたび紹介しているが、遺言書には3種類ある。

 本人が手書きで書いた自筆証書遺言のほか、2人以上の証人の立ち会いのもと公証人に確認してもらう秘密証書遺言、話す内容をもとに公証人が作成する公正証書遺言だ。

(週刊朝日2021年12月3日号より)
(週刊朝日2021年12月3日号より)

 専門家の多くは公正証書遺言を勧めるが、自筆証書遺言は昨年7月、全国の法務局で保管する制度ができた。この制度を利用すると紛失や改ざんの恐れがなくなり、家庭裁判所での「検認」の手続きもいらないので、参考にしてほしい。

 遺贈寄付の普及活動や寄付先の紹介をしている一般社団法人「全国レガシーギフト協会」(港区)の理事、山北洋二さんはこんなアドバイスをしてくれた。

「法定相続人が最低限もらえる取り分である『遺留分』に注意しましょう。遺留分を上回るような寄付をしてしまうと、相続人が不満を感じたり、寄付の返還を求めたりするといったトラブルになる恐れがあります。『付言事項』で、寄付をする理由や遺族への想いを書き残しておくこともおすすめします。遺族の納得が得られやすい」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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