3番目は東大第二内科の上田英雄教授。医学部で内科の授業を担当していました。その頃、私はスキーに凝っていて、卒業試験が済むやいなや、蔵王温泉スキー場に。3週間ほど、スキーを楽しんで下宿に帰ってみると一枚の葉書が来ています。上田教授の試験が不合格につき、○月○日に事務局に出頭せよというのです。でもその日はとっくに過ぎています。とにかく事務局に行くと、上田教授と連絡をとってくれました。そして、今からすぐに追試験をしてくれるというのです。私は何の準備もなく教授室に向かいました。部屋に入ると教授は授業では見せないやさしい笑顔で、

「追試験はこれをもって終了。帰って良し!」

 と言うのです。驚いて返事ができずにいると、

「あっ、もうひとつ。これからは東大出と言うだけでは通用する時代じゃないからね。よく覚えておいてよ」

 と諭してくれました。

 以上3人の言葉に共通しているのは「寸鉄人を刺す」といった発言のインパクトです。そして聞く若者をさわやかな気持ちにさせてくれます。そんな言葉を我々は若い人たちにかけたいですね。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2021年11月19日号

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帯津良一

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帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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