紳士的な優しさから、「国民的彼氏」の異名をとるKing & Princeの神宮寺勇太が今冬、単独初主演舞台で「いやな男」と「闇を抱えた青年」を演じる。三島由紀夫の「近代能楽集」のうちの、欲望や情念など人の心の闇をえぐる2編、『葵上(あおいのうえ)』と『弱法師(よろぼし)』にいかにして立ち向かうのか。

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──2作品についての印象は?

 僕の勉強不足で、最初三島由紀夫さんと聞いてもわからなかったんですよね。調べてみて、昭和を代表するすごい方ということを知って。

 人間のどろっとした深い部分を描くんです。僕は毒気もないしさらっとしてるので、考えたこともなかった。どちらも難しい、一筋縄ではいかない2役です。

『葵上』で演じる主人公の光は、「源氏物語」の光源氏がモデルのプレイボーイの役。妻の葵のことは全然愛してなくて、「最近(葵は)病気ばかりしてめんどくさいなぁ」と思いながら結婚生活をしてる役なんですね。

 葵が入院して、「やっと今朝仕事をすませて駆けつけてきた」という台詞があるんですが、よく考えると5日ぐらい経っているんです。光はぞっとするタイプの、冷たい、いやな男です。

『弱法師』は、俊徳という戦火で目が見えなくなった20歳の青年役なんですけど、毒というよりも闇を抱えていますね。目が見えなくなった瞬間の景色を鮮明に覚えていて、この素晴らしい景色を見たということだけを頼りに生きている。

 でもやっぱりとてつもない孤独を抱えていて、すぐにキレたり、素直になれなくて育ての親を奴隷のように扱ったり。「自分の言葉で人の心に火傷をつけているけど、自分の心にも絶えず火傷をつけている」という台詞があり、とんでもなく闇が深いなと思いますね。

──「国民的彼氏」として、この2役を演じるうえでの戸惑いは?

 いや、まったくないです。国民的彼氏とファンの方に呼んでいただくのはありがたいですし、自分でもふざけて言うことはあるんですけど、そうなのかなあといつも疑心暗鬼です。真面目そうとよく言っていただきますが、意外と僕、おちゃらけた、ふざけた奴なので(笑)。

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