(週刊朝日2021年10月29日号より)
(週刊朝日2021年10月29日号より)

◆あっという間に困窮者に転落

 空き家になった自宅は子どもたちにとって重荷になる。子どもたちは忙しく、親が生きている間は自宅の荷物を片づけられない。自宅の面倒をみる人が誰もなく、庭は草ぼうぼう、屋根や壁が傷むなど、建物が崩れ落ちそうになることもある。そうした自宅問題の相談を受けている伊藤さんは「みなさん、手遅れ感がある」と話す。

 伊藤さんが勧めるのは、いい立地の空き家なら、親の荷物を片づけて貸し出し、お金を生む資産にしておくこと。自宅は修繕費や固定資産税などがかかるが、その費用を捻出できる。

「売るにも、貸すにも、直すのも、つぶすのにも手間や費用がかかり、悩んでいる人もいる。自宅は必要なのか不要なのかで、対応の費用や手続きが違ってくる。どこかのタイミングで、家族たちが早めに議論しておくのがいい」(同)

 生活費のため、自宅を処分せざるを得ない高齢者もいる。ファイナンシャルプランナーの豊田真弓さんによると、所得水準の高かった人が引退しても現在の生活費を圧縮できないケースがある。

「1部上場企業などに勤めていた方などで、退職金を住宅ローン返済にあてるつもりで、教育ローンまで抱えていると、手元のお金はなくなってしまう。引退後に生活費を圧縮できないと、あっという間に困窮者に転落します。困窮者支援をしている友人から、対象者には身なりのきちんとした方が一定数いると聞いています」(豊田さん)

 老後の生活費のため、自宅に住み続けたまま売却するリースバックという手法がある。売却先の業者から自宅を賃貸借するもの。浜田さんによると、売却額は低め、賃借料は高めの仕組みで、「自宅の相場感をつかみながら、安い部分と高い部分を許容できるか」がポイントになるという。長嶋さんは「売却額は相場の6、7割の低めの評価。家賃を払い続けるので、長生きするリスクは本人にかかってくる。売却額よりも、払い続ける家賃が多くなる可能性がある」と話す。

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