(週刊朝日2021年10月29日号より)
(週刊朝日2021年10月29日号より)

 では高齢者の自宅はどうしておくべきか。高齢者の子どもたちからの相談はよくあるというのはワーススタイルホーム(東京都渋谷区)代表の浜田昭平さん。親が住んでいた不動産に、相続人が住むケースは昨今、少なくなっているという。そうした場合は、所有権を持つ親が不動産を現金化しておくのが一番いいが、元気なうちから自宅をどうするか、検討しておくといいという。

「住み続けたいばかりに、意思決定の遅い人がトラブルになりやすい。本人だけでなく、まわりの人も考えてあげるべきです。売るつもりがなくても、自宅がいくらになるのか、業者と対等の関係で、強い消費者のうちに情報収集しておくといい」(浜田さん)

 不動産関連業者と取引をせず、情報収集だけなら費用がかからないことが多い。自宅の価値がいくらぐらいか、試算してくれる人はいるので、「不動産のことで親身になってくれる人がいるといい」(同)。

 自宅の問題が本格化するのは、1947~49年に生まれた「団塊の世代」から相続するケースが増えてくる今後5~10年とみているのが、不動産コンサルタントで、さくら事務所(東京都渋谷区)会長の長嶋修さん。

「相続でもめることがあり、多くの場合は遺言がない。自宅に思い入れがあり、できれば自宅で最期を迎えたい。晩年は自宅を処分しづらく、売るでもなく、そのままになりやすい。子どもからは言いづらく、親が自宅をどうするのか、亡くなる前に決めておくのがいい」(長嶋さん)

 老人ホームなどに入所し、自宅が空き家になると、さまざまな問題が出てくる。「空き家問題は自分のことにならないとピンとこない」というのはNPO法人の空家・空地管理センター(埼玉県所沢市)理事の伊藤雅一さん。

「長寿化で実家が空かない。子どもたちは先に実家を出て、核家族化が進んでしまった。親が認知症になると、亡くなるまで相続できず、実家の問題が突然、迫ってくる」(伊藤さん)

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