(週刊朝日2021年10月29日号より)
(週刊朝日2021年10月29日号より)

 強引な不動産業者に執拗に迫られて自宅売却の契約書にサインしてしまった──。そんなシニアが増えているという。不動産をどうするのか、早めに解決しておかないと、想定外のトラブルに巻き込まれることになる。

【不動産売却をめぐる国民生活センターからのアドバイスはこちら】

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 80代で一人暮らしの女性は今年初め、訪ねてきた不動産業者に自宅マンションの売却を執拗に勧誘された。突然の訪問で契約書に署名押印させられてしまったが、書面など一切受け取っておらず後悔している。

 女性側からの相談を受けた国民生活センターによると、女性は不動産業者が訪ねてきたとき、介護サービス業者と間違ってドアを開けてしまった。業者2人がマンションの売却を執拗に勧め、朝10時から夜9時半まで居座った。翌日も朝10時から押しかけて夜7時半まで売却を勧誘、「売却すれば入居する施設を探してあげる」と言われて根負けして、「売値を200万~300万円上乗せしてくれるなら」と応じ、2300万円で売ることになった。後になって後悔し、契約はなかったことにしたいという。

 別の80代の女性のケースは、要介護認定を受けて一人で暮らしていた昨年半ばのこと。不動産業者からお得な話があると長時間勧誘され、自宅マンションの売却と賃貸借契約にサインをした。

 この女性は当初、業者の電話勧誘に応じ、訪問を受け入れたところ、業者2人が来て「1千万円で買い取り、その後は13万円の家賃を払って住み続けられ、管理費や修繕費、固定資産税がかからず有利」と勧誘された。最初は断ったが、「マンションが古いので早く決めないと売れなくなる」などと夜11時ごろまで粘られてしまい、契約書にサインしてしまった。あとで解約したいと業者に伝えたが解約してもらえず、国民生活センターに相談したという。

 国民生活センターの担当者は「業者は宅地建物取引業法に基づき、うまく勧誘している。長時間にわたる勧誘だったといっても、自宅内での勧誘になると、(録画や録音がない限り)証拠がありません。高齢者の方にはひどい事例があると知っていただいて、自宅には業者を入れないでいただきたい」と話す。

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