ただ、紙一重の勝負で勝利はどちらに転がってもおかしくはなく、ホームにもかかわらず試合を優勢に進めていたのはオーストラリアだった。

「プレッシャーのかかる状況で結果的に積極的だったかどうかは見ている方に判断してもらえれば。私自身としては前向きな采配をしたいと考えていた」(森保監督)

 布陣の変更やこれまでになかった選手起用がみられたことで、指揮官の進退問題は収まった感があるが、森保監督は選手の奮闘に救われたと言える。土壇場でのシステム変更を強いられたのは、これまで何度も試す機会がありながらそれを怠ってきた証しであり、選手起用にしても一部の選手に固執せず状態のいい選手を送り出すのは普通のことで、特段称賛されることではない。

 オーストラリア戦に勝利してもグループ4位と、「首の皮一枚でつながっている」(吉田麻也/サンプドリア)厳しい状況に変わりはない。11月はベトナム、オマーンとのアウェー2連戦となるが、連勝しても3位に食い込めない可能性はある。

 今後も森保監督のままでいいのか。手遅れになる前に打つべき手を打たないと、こんどこそ取り返しのつかない状況になりかねない。(ライター・栗原正夫)

週刊朝日  2021年10月29日号