オーストラリアに勝利し、田中(右)をねぎらう森保監督 (c)朝日新聞社
オーストラリアに勝利し、田中(右)をねぎらう森保監督 (c)朝日新聞社

 負ければ、6大会続いてきたW杯出場が遠のく一戦だった。サッカー日本代表は12日、ホームでオーストラリアに2-1と勝利し、危機的な状況だけは回避した。

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 2022年W杯カタール大会出場をかけたアジア最終予選は9月にスタートした。アジア最終予選は、A、Bの2組に分かれ、本大会の切符を手にするためには各組の上位2位以内に入るか、各組3位同士のアジアプレーオフを勝ち抜き、さらに大陸間プレーオフでも勝利する必要がある。年内は9、10、11月に2試合ずつをこなし、来年3月までに全10試合を戦うが、日本代表はオーストラリア戦までの3試合ですでに2敗(1勝)を喫するなど、あとがない状況に追い込まれていた。

 サウジアラビアとオーストラリアが3連勝と好スタートを切ったなか、選手層で上回る日本代表の調子が上がらない理由の一つに、スタメンを固定し、戦術がパターン化した森保一監督の堅実すぎる采配があったことは否めない。オーストラリア戦前には、仮に引き分け以下の結果に終われば、監督解任もやむなしという声も少なくなかった。

 結果的には、開始8分にこの試合で予選初先発の23歳のMF田中碧(デュッセルドルフ)のゴールで先制。70分に一度は同点に追いつかれるも、86分に途中出場の浅野拓磨(ボーフム)のシュートが相手のオウンゴールを誘い、事なきを得た。

 これまでほぼ一貫して4-2-3-1の布陣で戦ってきた日本代表は、ほぼぶっつけ本番に近い形で4-3-3へ布陣を切り替え、中盤では指揮官が「調子を見て決めた」という田中とともに代表経験の浅い守田英正(サンタクララ)が躍動。決勝ゴールを呼び込んだ浅野のスピードも、チームに勢いをもたらした。

「人生のなかで、これ以上ないほど緊張した。ただ、日本サッカーの進退がかかった試合で、後悔のないプレーをしようと思っていた」(田中)

 崖っぷちに追い込まれたことで、選手に強い危機感が芽生え、チームの結束力は一気に高まった。試合終盤、ベンチに控えていた選手も誰一人座ることなく、チームを鼓舞し続け、決勝弾が決まった直後には全選手が重なって歓喜の輪ができた。

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