のちに「100人の最も偉大なイギリス人」にも選ばれたデヴィッド・ボウイ。映画「スターダスト」は、アルバム「ジギー・スターダスト」を発表し、グラム・ロックの旗手となる直前の日々を描く。監督はドキュメンタリー出身のガブリエル・レンジ。
1971年、ニューアルバム「世界を売った男」をリリースした24歳のデヴィッド(ジョニー・フリン)は、イギリスからアメリカヘ渡り、マーキュリー・レコードのパブリシスト、ロン・オバーマン(マーク・マロン)と共に初の全米プロモーションツアーに挑む。しかしこの旅で、自分が全く世間に知られていないこと、そして時代がまだ自分に追いついていないことを知る。
そんな中でのヴェルヴェット・アンダーグラウンド、アンディ・ウォーホルとの出会いなど、アメリカは彼自身を大いに刺激する。いくつもの殻を破り、やがて彼は世界屈指のカルチャー・アイコンとしての地位を確立する最初の一歩を踏み出す──。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
若い日のボウイが星のかけらから世界の刺激的、挑発的アーティストへと駆け上がる途中の苦しみが語られているように見える。映画としては不器用な作りだが、やりたいことが受け入れられない天才の苛立ちが伝わってきた。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
カリスマになる以前の無名に近く、悩み多きボウイの風変わりなアメリカ行脚。兄のように統合失調症になるのではという不安と、音楽を通して別人格を創造するという発想がさりげなく結びつけられているところが面白い。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
映画としてどうかより人生としてどうかと見ました。人に歴史ありということで世界観に入れた。80年代にボウイ好きでしたが、ちょっと自由にやりすぎて今更心配しちゃいました。不安を抱えてますが、やはり伝説!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
非公認なので、ボウイの楽曲が一切使われていないが、ミュージシャンでもある俳優が演じているのと大胆な映像などで、アイデンティティー確立までの興味深い考察になっている。ファン向けのような仕上がりが惜しい。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年10月8日号