(週刊朝日2021年9月24日号より)
(週刊朝日2021年9月24日号より)

 高齢化の進展で65歳以降の「長く働く生活」が注目されている。フルタイムからアルバイトを含む「チョイ働き」まで働き方はさまざま。年金のもらい方と組み合わせれば、「ゆうゆうリタイア」も見えてくる。家計への影響や、どんな働き先があるのかを見てみよう。

【働き方さまざま 65~75歳の仕事・年金7パターンはこちら】

*  *  *

 東京都内のAさん(69)は、すでに75歳までの「活動」が決まっている。

「約8年間、通信機器メーカーの顧問として働いてきましたが、今年の暮れに70歳になるのを機に辞めようと思っています。次はNPO活動に取り組みます。数年前に関わりを持つようになった、一般の方の相続のお手伝いをする組織です」

 来春、そのNPOの要職に就くことが内定している。5年間は深い関わりをするつもりなのだ。

 Aさんは60代の人生をすべて自分で切り開いてきた。

 長年勤めたメーカーは、60歳定年ですっぱり辞めた。自由を謳歌して気ままに暮らしていたが、すぐに飽きがきた。外国人に日本語を教えるボランティアを始めたり、生活に役立つ資格を取ったり……。ひょんなことから旧知の通信機器メーカーの社長と再会できた。

「つきあっているうちに『顧問として手伝って』と誘われたんです。週3日勤務でしたが、やっぱり生活が変わりましたね。働いていると生活にリズムが出ます。毎日やることがあるのは気持ちがいいものです。もちろん日本語ボランティアや資格を生かした活動も、ちゃんと続けていました」(Aさん)

 年金は60歳代前半からしっかり受給した。顧問の収入は月十数万円。ほかに家賃収入もあるため、顧問分は家計ではなく自分の「おこづかい口座」に入れた。月々使う分は自らの稼ぎで十分賄えた。

「結局、60代の間働き続けたおかげで、現役時代に準備した貯蓄にはほとんど手を付けずにすんでいます」(同)

 Aさんの生き方は、二つの意味でこれから高齢期を迎える60代、50代の人にとって参考になる。一つは「社会活動」。働いたりボランティアをしたりで、常に社会と関わり続けている。もう一つは、それを収入につなげられたこと。月十数万円の顧問料は現役時代の給料に比べれば低いが、8年間続けると、それでも千数百万円になる。

著者プロフィールを見る
首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

首藤由之の記事一覧はこちら
次のページ