『定年3.0』などの著書があり、老後ライフにくわしい経済コラムニストの大江英樹氏が、高齢期に働くことの意義を強調する。

「人生100年時代の老後は、もはや『余生』を大きく超えています。一生懸命節約して貯蓄し、一部を資産運用に回しても、それで十分とはいえなくなってきています。私はこれからの老後を生き抜く最も重要なキーワードは『自助』だと思っています。そして、その自助の最大のものが、いつまでも元気で働ける力なのです。老後の三つの不安といえば『お金』と『健康』、そして『孤独』ですが、働いていればその間はこの三つすべてを解消できます」

(週刊朝日2021年9月24日号より)
(週刊朝日2021年9月24日号より)

 65歳までの雇用が当たり前になり、70歳までの就業機会の確保が今年度から法律で企業に努力義務化された。「長く働く」ことの焦点は今、「60歳代後半」に移っている。元気な高齢者たちの姿を見ると、「その先」を見据える必要性も感じる。

 65歳以降も働く生活とはどのようなものなのか。

 何事も「モデル」があるとイメージがしやすい。そこで、アクティブに暮らせるという意味で、老後の「黄金期」を65~85歳の20年間とし、冒頭のAさんのように、前半の5~10年を主に働いて社会活動をするという前提で考えてみよう。

 いつまで働くか、どう働くか、そして年金は何歳からもらうか──この三つを軸に老後の姿をパターン化すると、大まかな生活のタイプが浮かび上がってくる。

 これまでと同じく65歳で仕事を辞めて年金生活に入るタイプを従来型(A)とする。働く期間は「70歳まで」と「75歳まで」の2通り、働き方は週5日の「フルタイム」とアルバイトを含む「チョイ働き」のいずれか、そして年金は「65歳から」、5年繰り下げて「70歳から」、余裕がある人のケースとして10年繰り下げて「75歳から」の3通りとした(年金は1カ月繰り下げるごとに0.7%増額。現在は70歳まで、来年春に75歳までに拡大)。

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