林:はい、見ましたよ、朝井さんの「情熱大陸」。

朝井:で、林さんの「情熱大陸」を拝見して反省したんです。あの番組に出るんだったら「何を撮られてもいい」という覚悟で出ないとダメだなと。それくらいNGなしって感じが伝わってきました。私は、当時の勤務先はカメラNGで、とかいろいろ注文をつけたのですが、自分も早く、細かいことを気にせず、どうでもいいと思えるようになりたいなと思ったんです。

林:そんなことないですよ。私、あの「情熱大陸」、アタマにきちゃった。電車の中で寝てるところまで撮って(笑)。

朝井:そこがよかったんですよ! あれで皆さん林さんの器の大きさを知ったはずです。あれを見て、林さんのことをすごく好きになった人、多いと思います。林さんって何でもOKな人なんだな、カッコいいなって。

林:私、そんな寛大な人間じゃないですよ(笑)。でも、「発言者としてこれだけ文字を発していたら、いろいろと言われたりしても、しょうがないや」って、あるときから思えるようになりましたけど。

朝井:私も早く、いろんなことについて「どうでもいい、まあしょうがないや」と思えるところにまで行きたいです。

林:あと10年、40代になったら大丈夫ですよ。

朝井:その状態でまた、林さんといろんなお話させてください。

林:はい、楽しみに待っています。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

朝井リョウ(あさい・りょう)/1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。小説に、『世にも奇妙な君物語』『何様』『発注いただきました!』『スター』など、エッセーに『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』。自身の作家生活10周年記念作品のひとつとして今春、『何者』以来、約8年半ぶりとなる書き下ろし長編小説『正欲』(新潮社)を刊行。

週刊朝日  2021年9月10日号より抜粋