郷:ハハハ、言いそうですよね、ケンケン(笑)。

林:アフォリズム(警句、金言)っていうのかしら、「そうか、アイドルって民衆のいけにえなんだ。だから、老けたり太ったりできないんだな」と思いましたよ。

郷:でも、僕の場合、体を動かすことが好きだし、結果としてそうなってるんですよ。「動ける体と動けない体、どっちがいい? 動ける体のほうがいいよね。もっとスピーディーにターンするためにはどうしたらいい? ある程度やせてたほうがいいよな」って考えれば、自然とトレーニングするし、太らないようになるんです。

林:それはそうですけど……。

郷:結局、僕にとって大事なのは、「郷ひろみ」でいたいか、いたくないかなんです。それを自分に問いかけると、いつも「郷ひろみでいたい」と思う。「そのためにすべきことは何?」って考えると、おのずから答えは見つかります。それを僕はやってるだけで、生きていくにはやっぱりどこかで努力しないといけないと思うし、理不尽だなって思うこともありますけど、その理不尽さが自分を強くすることもありますよ。

林:すごいです。ちょっと感動しちゃった。

郷:トラブルも、逆境も、自分を強くしていくためのものだと考えれば、どんなトラブルも僕は受けて立つことができます。僕がデビューした10代のころは、「歌か踊りか、どっちかにしたら?」って言われて、歌って踊ることには否定的な時代だったんですね。でも、僕はそのとき「歌は心で歌うって言うけれど、体で歌うものなんじゃないかな」って思ってたんですよ。それでトレーニングをずっと続けてきたから、今も動ける。だから郷ひろみを否定する声があるのは、僕にとって、大事なことなんです。

林:なるほど……。

郷:否定的な意見からバイタリティーが生まれてくるし、否定的な意見に負けちゃいけないっていつも思うんですよ。

林:すごいな。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

郷ひろみ(ごう・ひろみ)/1955年、福岡県生まれ。72年、NHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優デビュー、シングル「男の子女の子」で歌手デビュー。同年、第14回日本レコード大賞新人賞を受賞。「よろしく哀愁」(74年)、「お嫁サンバ」(81年)、「GOLDFINGER’99」(99年)などヒット曲多数。今月、106枚目となる両A面シングル「100GO!回の確信犯/狐火」をリリース。現在、全国ツアー<HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” ~More Than The Golden Hits~>が開催中(10月18日まで)。

週刊朝日  2021年9月3日号より抜粋