左から、保坂展人氏(撮影/小暮誠)、中島岳志氏(c)朝日新聞社
左から、保坂展人氏(撮影/小暮誠)、中島岳志氏(c)朝日新聞社

 コロナ対策が暗礁に乗り上げる中、政治の季節が迫りつつある。「アンチ菅」世論が高まる一方、支持が広がらない野党。国民の政治不信を脱却する道とは。対談集『こんな政権なら乗れる』(朝日新書)を上梓した政治学者の中島岳志氏と世田谷区長の保坂展人氏が緊急対談した。

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保坂:首都圏などへの緊急事態宣言が当初の8月31日から9月12日まで延長されました。しかし、現在の感染爆発がわずか12日間の延長で収束するはずがなく、感染対策の実態に即して期日を決めたとは思えない。つまるところ、菅義偉首相は9月29日に予定される自民党総裁選の前に解散総選挙を行うというカードを残すために、政治日程を優先したのではないでしょうか。

中島:こうしたプロセスが繰り返されることで、国民と政府、あるいは政治との信頼関係が揺らいでいます。政権は国民の倫理観や忍耐に期待して、自粛警察と呼ばれるような同調圧力による支配で感染を抑え込もうとしてきました。しかし、自粛を切り札にするのなら、真逆のメッセージとなる東京五輪・パラリンピックは決して開催してはならなかった。その一方で、医療体制は整えず、政治不信が募るのも当然です。

保坂:緊急事態宣言の効果がなくなっていることも、政治不信の表れでしょう。与党の幹部が集まって会食しながら、“黙食”と言い訳したのは典型的です。政治家は自分たちのやりたいことは大いにやりつつ、国民には営業自粛などさまざまな制限をかける。これでは国民は政府の言うことなど真面目に聞く気がなくなる。感染対策の上で非常にまずい。

中島:ワクチンの供給に関しても、情報発信が不誠実でした。河野太郎行政改革担当相は、米モデルナ製のワクチンの供給量が6月末時点で当初予定の3分の1しか入ってこないことを事前に把握しながら公表せず、東京都議選が終わった途端に明らかにした。ワクチン接種の遅い自治体に対して「1クール分の配送を飛ばす」などと脅してあおりながら、突然ハシゴを外したのです。これでは自治体は政府を信頼して施策を進められなくなります。

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