そう一気に話した後、「でも本当にわからない。ねぇ教えて、この話は一体何が言いたいの?」と、まるで舞台上にいるかのように、ドラマチックに叫ぶのだった。もはや“キムラ緑子劇場”である。

「ひと月ぐらい稽古しますけど、その間に、自分に何が起こるのか。何を発見できるのか。それがすごく楽しみです。演出の加藤拓也さんとは初めてご一緒するんですが、素敵な方だと聞いているので、この作品の良さがまだわからない私が、『なるほど!』と膝を打つ日はきっと来るはず。これだけみんなが、『安部公房はすごい』『これぞ代表作!』って言っている作品の面白さがわかる日が訪れたら、それは私の成長ですから! 今のワクワク感はゼロないしマイナスですが、逆にいえばそれは、私の伸び代が大きいということですよね(笑)」

(菊地陽子 構成/長沢明)

キムラ緑子(きむら・みどりこ)/1961年生まれ。兵庫県出身。同志社女子大学卒業後、劇団「M.O.P.」の旗揚げに参加。主宰マキノノゾミ作品を中心に、2010年の解散まで看板女優として活躍。00年頃から映像にも進出。13年、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」でヒロインの義姉を演じ注目される。出演ドラマ「白い濁流」(NHK−BSプレミアム)が22日からスタート。

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週刊朝日  2021年8月20‐27日号より抜粋