※写真はイメージです (GettyImages)
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(週刊朝日2021年7月23日号より)
(週刊朝日2021年7月23日号より)

 定年後は、もはや「余生」ではない。

【自分から居場所を「抜き出す」3つのポイントはこちら】

 65歳男性の平均余命は約20年。その間の3次活動時間(食事や睡眠、家事、介護などの生活維持に要する時間を除いた自由時間)は6.8万時間ある。23歳から65歳までの総実労働時間は8.6万時間だから、現役時に働いた時間の8割に相当する自由時間を定年後に過ごすことになる(※)。中島敦の「山月記」の一節ではないが、「定年後は何事をも為さぬには余りに長い」のだ。

 では、会社に代わる居場所をどこに見いだせばよいのか。まず思い浮かぶのは、もう一度「働く」ことだろう。

 静岡県在住の中嶋康博さん(70)は、40年近く勤めた産業機械の販売会社の営業職を63歳で退職した。3年前からマンションの管理人として働いている。

「同級生から『やらないか』と誘われて始めました。今は週4日、1日6時間勤務しています。仕事の内容は、エントランスとか廊下とかの共用部分の清掃や備品交換、あとはたまに住人同士のクレーム対応とかですね。時給は800円台でだいぶ安いですよ(笑)。ただ、家にいてもやることないし、家計にあんまり負担をかけたくないっていう思いもありました」

 以前勤めていた会社では、60歳を機に「定年後再雇用制度」が適用され、1年単位の雇用契約に切り替わった。業務内容は変わらないが、正社員だったときと比べると給料はかなり減り、ボーナスも支給されなくなった。

 ただ中嶋さんの場合、経済的な不安以上に、「人や社会と関わりを持ち続けたい」という気持ちが、働く原動力となっているようだ。

「元々営業マンだったこともあって、人と話すのが嫌いじゃないんです。今の仕事も向いていると思う。住人の方からお礼を言われたり、世間話をしてるときなんか、特に楽しいなと感じますね。定年後も社会に出て働いたほうが、交流が増えて僕はいいと思いますよ」

 中嶋さんのように、仕事に「やりがいや社会参加」を求めるのはシニア世代の特徴のひとつだ。

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