年間約7千人のシニアが就労相談等に訪れる「東京しごとセンター」を運営する公益財団法人東京しごと財団の國生哲郎さんによると、意外にも就労相談に来るシニアからは「自分がどんな仕事に向いているかアドバイスがほしい」という声が多いという。

「その場合、これまでの経験を“棚卸し”すること、また一つの職種にこだわらず幅広く検討してみることを勧めています」

 現役時代は生活のためにがむしゃらに働いていたが、いざ会社を離れてみると、その仕事が本当に自分に向いていたのか、ほかに合った仕事があるのではないかと悩む人も少なくないようだ。そうした課題に応えるため、東京しごとセンターでは55歳以上を対象とした「シニアコーナー」を設置。医療・介護・調理など、各業界で働くために必要な知識やスキルを無料で学べる「就職支援講習」や、65歳以上を対象に就職を希望する企業の職場体験ができる「しごとチャレンジ65」などの取り組みを講じている。

 國生さんは、最近のシニアの就職状況について、「事務職を希望する方が多いが、求人が少なく、マンション管理員や清掃員、警備員など、職種転換して未経験の仕事に就く方も多い」と話す。

 定年後の再就職にあたっては、現役時代の職種ではなく、「営業職→人と話すのが好き&得意→接客業もあり」といったように、今までの経験から得た“職能”に注目して考えることが満足度を高めるポイントとなりそうだ。

 一方で、「趣味」に居場所を見いだすシニアもいる。

 埼玉県在住の鍋島和郎さん(66)は、50代中盤からシニア向けのネットコミュニティサービスを活用し、これまで延べ千人以上と交流を深めてきた。

「私が使っているのは『趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)』というサイト。同じ年度に生まれた人が集まる『やっぱり同級生』っていうコミュニティで知り合った人とサイトの中で会話したり、年に数回、九州や京都に旅行に行ったりしてました。全員同い年なので話題も合うし、すぐに意気投合できるんですよ」

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