桜木紫乃(撮影/写真部・高橋奈緒)
桜木紫乃(撮影/写真部・高橋奈緒)
桜木紫乃さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・高橋奈緒)
桜木紫乃さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・高橋奈緒)

『ホテルローヤル』や『家族じまい』のヒット作で有名な作家・桜木紫乃さんが、作家・林真理子さんとの対談にご登場です。作品への思い、地元・北海道での記憶など、たっぷり語ってくださいました。

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林:桜木さんは釧路のご出身ですけど、釧路にいるとゆっくり落ち着いて書けますか。

桜木:私、いま札幌の近くの江別というところで夫と二人で暮らしてるんです。子どもたちは二人とも巣立ったので。のんびりやっています。

林:地方に住んでる作家の方って頻繁に編集者とも会わないし、何となく静かになっちゃう方が多いですけど、桜木さんはすごいですね。特にこの何年かのご活躍は。

桜木:新刊も年に1冊か多くて2冊ぐらいなんですけど、『ホテルローヤル』(直木賞受賞作)の映画化とか、いい具合に「そろそろ」というところで話題にしていただいて、私はただそれに乗っかっているだけなんです。ありがたいですね。

林:『家族じまい』(中央公論文芸賞受賞作)も、すごくおもしろかったです。

桜木:これ。(指にはめた指輪を見せて)記念品でいただいた指輪です。ありがとうございました(編集部注:林さんは中央公論文芸賞の選考委員)。ところで、林さんの『小説8050』、バカ売れしてますね。おめでとうございます。

林:ありがとうございます。バカ売れなんてとんでもないです。『家族じまい』、桜木さんはこういうものもお書きになるんだと思いましたよ。「官能小説がうまい作家」って言われるのイヤでしょう?

桜木:『ホテルローヤル』を出したあたりから、家族のことに目を向けてもいいという心境になってきました。『ホテルローヤル』が、ストリッパーが服を脱いだ状態の本だとしたら、『家族じまい』は服を脱いだあとに脚を広げたような本だったと思います。うまいたとえじゃないですけど(笑)。

林:家族のことを実に巧みなテクニックで書いていて、こういう書き方があるのかと思いましたよ。一人ひとりが捨てきれない思いを抱える中で、過去ばっかり見てるわけにもいかず、未来もちゃんと見なきゃいけないというあの感じがすごくよかった。

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