──小選挙区制の中で、選挙の負担が重かったのでしょうか。

 今のやり方で女性が選挙を勝ち抜くのは本当に過酷です。たとえば毎朝駅頭に立つって本当に大変。7時から始めるとして、支援してくれる地方議員さんがいたら候補者は6時半に行かなくてはいけない。そこから一日中足を棒にして、握手の数をカウントしていく。そんなやり方で能力のある女性が政治家を選びますか? 志を高くやろうとして続きますか? 不可能だから、戦後70年たっても衆議院の女性の割合は全然増えない。握手以外の候補者のアピール、評価軸を作らなければいけないと思う。政治家は新たな政策課題の勉強などに労力を振り向けるべきなのに、選挙の負担が重すぎて時間がない。今の選挙制度って政治家の成長を妨げる面がある。

──もちろん政策で勝負するのも大事でしょうが、すべての有権者が政策判断をできるわけではありません。この人の言うことなら信じられる、託したい、だから投票する、ではダメですか?

 私も政策だけだとは思いません。握手することが無意味かといえば、生で接する機会という意味で言えば大事です。でも、この人についていく、というのは卒業したほうがいい。人は変わっていくし、変わるのが当たり前。その人であれば何でもいい、出会った時のあの人が好き、みたいな状態でいくと、変わったその人を受け入れられなくなる時もあるし、その人であれば何でもいいというのもおかしい。政治家と有権者のウェットな関係で成り立つ一票には頼らないほうがいいと思います。

──前回の選挙で当選して以降、週末は地元に帰るという、政治家では当たり前の行動をやめていましたね。

 私は有権者の皆さんの娘でも妹でも家族でもない。だから盆踊りに行き、お祭りでをついて一緒に食べる、バス旅行をする、年末年始を一緒に過ごすといったことはできません。でもいただいた議席はプロとして仕事をして皆さんにできるだけ見える形でお返しします、と意識的に切り替えました。自分の中での実験でもあったんですね。「政治屋ではなくて政治家であれ」とか口ではみんな言いますけど、実践できているのでしょうか。私は前回議席をいただいてから、次の選挙のためではなくて、とにかくこの任期を全うするために国会で質問をし、法律を作る仕事をしてきました。

(聞き手/朝日新聞編集委員・秋山訓子)

山尾志桜里(やまお・しおり)/衆議院議員(当選3回)。1974年、宮城県生まれ。子ども時代、ミュージカル「アニー」で主役を演じる。東大法学部から検事を経て2009年の衆院選で初当選。民進党政調会長などを歴任。20年に立憲民主党を離党し国民民主党に入党。党憲法調査会長・広報局長兼シンクタンク戦略室長

>>【後編/山尾志桜里議員が語る文春砲「関心の高さが異常。必要以上に脇はしめません」】へ続く

週刊朝日  2021年7月9日号より抜粋