世界遺産で考える悲劇の意味「歴史の影を見ることで、光も目に入る」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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世界遺産で考える悲劇の意味「歴史の影を見ることで、光も目に入る」

南陀楼綾繁週刊朝日#読書
井出明(いで・あきら)/1968年、長野県生まれ。金沢大学国際基幹教育院准教授。社会情報学の手法を用いて、新しい時代の観光研究を行う。著書に『ダークツーリズム悲しみの記憶を巡る旅』『ダークツーリズム拡張 近代の再構築』。

井出明(いで・あきら)/1968年、長野県生まれ。金沢大学国際基幹教育院准教授。社会情報学の手法を用いて、新しい時代の観光研究を行う。著書に『ダークツーリズム悲しみの記憶を巡る旅』『ダークツーリズム拡張 近代の再構築』。

「世界遺産」という言葉は誰もが知っており、一度は行ってみたいという夢を抱く人も多いだろう。しかし、観光パンフレットに載るような美しく、楽しい場所ばかりが世界遺産に選ばれているわけではない。

「1978年の初回登録には、奴隷売買の場所だった西アフリカのゴレ島が入っています。アウシュビッツ強制収容所も広島の原爆ドームも世界遺産です。世界遺産には人類史の悲劇に関する遺構が含まれているのです」と話すのは、『悲劇の世界遺産 ダークツーリズムから見た世界』(文春新書 1210円・税込み)を刊行した井出明さん。

 世界遺産を考える際に重要なのが、「ダークツーリズム」という視点だ。90年代にイギリスで提唱された概念で、戦争や災害など「悲劇の記憶を巡る旅」を指す。

「歴史の影を見ていくことで、光も目に入ります。本書では、アウシュビッツや九州・山口を中心とした明治日本の産業革命遺産などの世界遺産に足を運び、そこで見たものについて考えています」

 日本は92年から世界遺産条約に加わっているが、観光振興と結びついているものが多いように感じられる。

「世界遺産は文化財を国際的に保全する制度ですが、アフリカなどの途上国の世界遺産に観光客が集まったように、経済的な効果もあります。日本の場合もそういう面が強いようです」

 第5章で描かれるように、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が2018年に世界遺産登録されるまでには、紆余曲折があった。

「日本側は『弾圧に耐えて信仰を守り抜いた』ストーリーを考えていたが、イコモス(ユネスコの諮問機関)から江戸幕府の弾圧に焦点を当てるよう指導されました。また、明治初期以降に建てられた教会建築も認められず、潜伏キリシタンの集落が対象になった。その中には、棚田とキリシタンを結びつけるような予想外の解釈もあったんです」

 世界遺産からは、政治を巡る国際的な駆け引きや、ヨーロッパとアジアの文明観の違いも読み取れるのだ。


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