人々の命や暮らしを守る「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちへの接種も遅れている。こうした仕事の多くは、テレワークもできない。介護業界の関係者はこう話す。

「高齢者施設の従業員は優先接種の対象なので接種が始まっていますが、在宅介護を支援するヘルパーの多くは、まだ接種できていません。高齢者の中には認知症などの持病で接種が難しい人も多い。介護関係者は、かなりの不安を感じている」

 厚生労働省は、在宅・訪問介護のヘルパーも、優先接種の対象にすることが可能だという指針を示している。だが、医療従事者の接種も終わっていない自治体が多いなかで、「接種計画について何の連絡も来ていない」(前出の介護業界関係者)というのが実態だ。

 一方で頭に入れておきたいのは、現在は不公平感があっても、「ワクチン格差」はいずれ解消され、誰でも接種できるようになるということだ。政府はワクチンについて、ファイザー社製9700万人分、モデルナ社製2500万人分の契約を終えており、全国民に接種するのに十分な量は確保されている。

 ところが、格差がなくなるまでゆっくりと待っていられない状況になってきた。インドで最初に確認されたデルタ株が、日本国内でも広がり始めたからだ。

 政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長など26人の専門家有志がまとめた提言によると、デルタ株は従来株に比べて感染力が1.8倍高い。7月中旬には、現在の日本国内で主流となっている英国株を逆転する可能性があるという。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)は言う。

「デルタ株が広がった英国では、5月上旬には2千人程度まで減っていた新規感染者が、17日に1万1007人まで急増しました。流行の中心は、ワクチン接種が完了していない若者です。日本でもデルタ株が広がれば、ワクチン接種が終わっていない人の間で感染者数が増えるのは間違いありません」

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