※写真はイメージです (いらすとや)
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(週刊朝日2021年6月4日号より)
(週刊朝日2021年6月4日号より)

 コロナ禍で残業代など給料が下がる家庭が増えている。と聞くと、孫を持つ祖父母が気になるのは、その孫にかかるお金のことだろう。「今や将来に役立つように援助したい」と思う祖父母が大勢いる。仮に今「100万円」あるとしたら、何ができるのか。かわいい孫への援助の仕方をあれこれ探る──。

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 孫に限らず、自分の財産を親族らに与える「贈与」への関心が高まっている。財務省の統計によると、贈与税の申告件数と課税価格は2008年に25万件台、約8200億円だったのが、18年には37万件台、1兆4800億円にまで増えている。課税価格はうなぎ登り、件数は12年に30万件を突破してから「高止まり」が続いている。

 相続専門の税理士、廿野(つづの)幸一氏が言う。

「相続で、それ以下なら相続税がかからない『基礎控除』という基準があるのですが、その金額が15年から大幅に引き下げられたことの影響だと思います。相続で税金をたくさん払うくらいなら、生前に贈与してしまおうと思う人が増えているのです」

 富裕層は以前から相続税節税のために贈与を使っていたというから、贈与のすそ野が広がっているということだろう。

 廿野氏が続ける。

「日々の相談を通じて感じるのは、ほぼ全員に共通する『非課税』への関心の高さです。相続だけでなく、贈与でもまったく同じですね。非課税だと申告する必要はありません。この統計の背後に、非課税の贈与が大量にあると見られています」

 相続税と同様に、贈与税にも「基礎控除」がある。「1人当たり暦年で110万円まで」がそれだ。孫1人に対して、この金額までなら贈与税はかからない。つまり、今回の「100万円」は無税で孫にあげられる。

 贈与で最も一般的なのが「現金贈与」だ。孫が大勢いた場合、全員に110万円ずつあげれば簡単に財産を減らせるため、富裕層が重宝している手法とされる。

 もちろん税務のことを考えると、現金で100万円を手渡しするのは得策ではなく、贈与の“証拠”を残すことが欠かせないという。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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