「贈与契約が成立するには、祖父母が無償で100万円を孫に与える意思を示し、孫がそれを受諾することが必要です。お互いの意思表示があれば問題ありませんが、税務当局が誤解しないように、契約書を作成したり、孫の口座に送金したりしておけば安心です」(廿野氏)

 気をつける必要があるのは、孫の口座は孫(小さい場合は親)が管理するものでなければならない点だ。通帳や印鑑を祖父母が持っていたりすると、「名義預金」と判断されて“アウト”になる場合がある。

 ちなみに今回の100万円では関係ないが、「100万円を10年間で合計1千万円贈与する」などとする契約は絶対に結んではいけない。

「『定期贈与』と言って、たとえ1年に100万円ずつでも1千万円贈与したことになってしまいます。孫が未成年だと、贈与税は231万円にもなります」(同)

 基本的に送金すれば終わる現金贈与はやりやすいが、“弱点”もある。お金をあげたあとは、もらった側がどう使おうが自由なのだ。ファイナンシャルプランナー(FP)の風呂内(ふろうち)亜矢さんが、孫側の事情を解説する。

「もらう側からすれば100万円は大きなお金です。親の立場に立つと現金が一番うれしいでしょうね。コロナ禍の収入減で、一つ習い事を増やしたりするのが難しくなっていますから。使い道は自分たちで決めたいと思うはずです」

 習い事だと孫のために使うからまだいいが、孫が小さかったりすると親が自分のために使ってしまうことも考えられる。

「孫のためだけに使ってほしい」という強い思いがあるのなら、使い道は教育資金に限定されるが「教育資金贈与信託」を使う手がある。

 直系尊属の父母・祖父母が子や孫に教育資金を一括で贈与する場合、1人につき1500万円までが非課税になる。13年の制度発足以来、人気があり、信託協会の資料によると、20年9月末の累計設定額は1兆7千億円に上っている。本来は20年度で終了予定だったが、2年間の延長中だ。

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