林:でも、先日亡くなった田中邦衛さんは、役になり切るために黒板五郎のあの格好で富良野の町をフラフラして、ラーメン食べたりしてたっておっしゃってましたよ。
光石:ねえ。でも、田中邦衛さんもあの帽子の脇から“田中邦衛”が出てたんだと思いますよ、やっぱり。僕は衣装に埋もれてますから、埋もれないようにしなきゃ。
林:そういう意味では、ご自分とかけ離れたヤクザの役なんて楽しいんじゃないですか。
光石:ヤクザの役、実はちょっと苦手なんです。ヤクザ独特のセリフ回しというか、独特のワードがありますよね。「うちの若いのがチャカを」とか専門用語がいっぱい出てきて、あれをまくしたてるのが苦手なんですよ。あの熱量がね。むしろ半グレみたいな、ヤクザでもなく、“お薬”を服用してる人のほうが好きかもしれないです(笑)。
林:台本が送られてくると、ご自分で選ばれるんですか。「これはイヤだな」とか「これはオッケー」とか。
光石:いや、それはマネジャーと相談して。僕が好きなのばっかりやってるのもよくないなと思って、「わかんないからまかせる」ってマネジャーに言いますね。
林:光石さんは今年還暦ですか?
光石:はい。9月で60歳です。
林:まだお若いから、お芝居のセリフを覚えるのも大丈夫ですよね。
光石:いや、苦労してます。だから舞台は数えるほどしかやってないです。映像って「オッケー」になったらどんどんセリフを忘れていくという作業なんで、舞台みたいに同じことを毎日やったり、稽古を何日もやることのほうが、役者にとっては勉強になるのかなと思いますね。僕、若いころそういうことをまったくやってこなかったので、ボケ防止もあって、「舞台もちょっとやらなきゃな」とこの年になって思ってるんですけどね。
林:光石さんも、コロナの影響はあったんですか。
光石:おかげさまで、去年の6月ぐらいに再開してからは、ずっと撮影現場に行ってました。
林:さすがですね。いま撮影中のものも、おありなんですか。